若泉敬教授

 11月29日付け毎日新聞余録に、京都産業大学におられた故若泉敬教授に触れたコラムが掲載されていた。

 「徳川三代将軍の家光が秘密が漏れることを極端に嫌っていて・・・」というコラム。沖縄返還の際の有事の核再持ち込みに関する秘密合意の関連で、当時の佐藤栄作首相の密使としてキッシンジャー米大統領補佐官との事前折衝にあたった若泉敬教授の著書で密約を交わす際の苦労が記されているというもの。

 若泉教授は有名だから、知っている方は多いと思うが、このコラムを目にして、久しぶりに思い出した。

 学生時代、若泉教授の講義中に、後ろの方の席である小説を読んでいて、そばに若泉教授が来られていることに全く気付かなかった。横に立つ人の気配に気付いて、見上げると若泉教授がおられ、笑顔で「その本は誰の本なの?」と聞かれ、「えっと、僕の本です。」と答えたら、また笑って「違うよ。どの作家の本なの。」そこで、「○○氏の○○という作品です。」と答えると、「そう。面白いかい?僕も読んだよ。」とまた笑顔でそのまま教壇に戻り、講義を再開された。

 てっきり怒られると思ったので、びっくり。でもその教室の光景と、若泉教授のやさしい笑顔が、つい昨日のことのように思い出される。